「メゾン・ド・ヒミコ」爽快感と人の温かさがたまらない秀逸作品!!

「メゾン・ド・ヒミコ」の感想あらすじ

【キャスト】

オダギリ・ジョー、柴咲コウ、田中 泯、西島秀俊、歌澤寅右衛門、青山吉良、柳澤愼一、井上博一、森山潤久他

【あらすじ】

「メゾン・ド・ヒミコ」は海辺に建つゲイのための老人ホームです。

この老人ホームのオーナーである卑弥呼(田中 泯)の余命が残り少ないことを卑弥呼の恋人である若く美しい男・春彦(オダギリ・ジョー)が塗装会社の事務員として働いていた卑弥呼の娘・沙織(柴咲コウ)に伝えにきました。

卑弥呼がいる老人ホームに高給で沙織を雇い入れます。父がいなくなったことで生活が苦しくなり亡母は借金をしていたのでお金のために老人ホームを手伝うことになりました。

そして、一癖も二癖もある老人ホームの住人たちの世話をしていく中で、彼らの優しさや哀しみを知るようになります。

ゲイに生きた父親を否定してきた沙織の心の成長と、春男と沙織の性を超えた恋情と、メゾン・ド・ヒミコを取り巻く人々との濃密なひと夏の物語です。

「メゾン・ド・ヒミコ」のみどころ

メゾン・ド・ヒミコという老人ホームは人間の愛憎と哀しみを描いているのに、コメディ映画のように笑ってしまいます。

父がいなくなったため、沙織は母子家庭で育ち苦労をしてきたので、性格は地味で人との関わりを持たないように生きてきました。塗装会社の女好きな専務とは体だけの付き合いがあるので、妙にリアルな会社の描写を感じました。

ゲイに対して嫌悪感を持ちながら、老人ホームでお金のために手伝いをするようになり、住人たちから、男性経験がないことや、「ブス」「処女」だの何だのと悪口を浴びせる。

小学生の男の子のように好きだからちょっかいを出しているのだな。と感じる可愛いいゲイたち。沙織は相手にせず仏頂面で接していましが、付き合って行くうちに、つらい経験をしてきたであろう住人たちの本当の優しさに触れて、そして住人たちも沙織の一生懸命さを認め、徐々にぶっきらぼうながらもお互いに信頼関係が生まれてきました。

そんな中、癌を罹った住人の一人を励ますため、ダンスホールへ着飾って春彦と沙織も一緒にみんなで繰り出します。ここで歌やダンスとなりミュージカル風になるのですが、その後の展開の対比が華やかだけれども胸が痛みます。

ダンスホールの店員や、元サラリーマンだった住人の同僚に辛辣な態度と言葉で罵倒します。それを聞いた沙織が激高し詰め寄っていく。人は異形なものには残酷なのだと痛感します。

しばらくして、春彦が沙織に突然キスします。キスに戸惑いながらも受け入れていくが、春彦はそれでも卑弥呼への愛が強いのです。春彦と沙織は一線を越えらず、やはり、春彦は男性しか愛せないのでした。うー、なんとも切ない。

また、卑弥呼も沙織が愛おしいのにその気持ちを素直に伝えることができない。沙織は母がゲイに生きると決めた父の元へ着飾って会いに行っていたことを、母が死んだ後知ることになり、愕然とします。母と同じような恋をしている自分に戸惑いながら、恋人のようでもあり、決して成就しない関係を受け入れていきます。

自分の性癖や、個性を気負わず自然に続けていくメゾン・ド・ヒミコノの住人たちと沙織の間に壁がなくなったときの爽快感と人の温かさがたまらない秀逸な作品です。

「メゾン・ド・ヒミコ」のキャストの魅力

オダギリ・ジョー

雨の中、傘を差して男が歩いてくる。シャツが白く品があり、強い意志をたたえた面持ちの中に静謐なエロティシズムを醸し出す春彦。美しくて正義感があり、静かな演技を哀しく、卑弥呼への愛と沙織との恋心も哀しい。オダギリ・ジョーは春彦そのもの。

柴咲コウ

女優さんには辛いすっぴんも柴咲コウなら躊躇なく出来るのだろう。素顔の沙織だからこそ春彦との切ない恋の純粋さが際立ちます。人格のオンオフの使い方が効果的で計算なのか、自然体なのかわからないほど自然でした。

田中 泯

この人の存在感たるや凄すぎる、田中泯。台詞がほとんどない演技は鍛えられた肉体と精神力に宿るのかと感嘆します。武士が美しく感じるのは刹那の中にいるからなのだろうか。武士のような田中泯は、鋭い眼光の中に命の時間が過ぎていく。その様は恐ろしささえ感じます。

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